手芸(テゲイ)のすすめ - TEGEI-

日本の伝統文化・手芸(テゲイ)の魅力を伝えるブログです。

手芸の歴史 その3

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手芸の歴史は大体3つの文脈があると考えています。

 

第一は、初出に関わる江戸時代以前の文脈

山東京伝小紋雅話」のように、

偶然にも載った手芸を探ったり、

源氏物語のような古典文学から、手遊びや手芸の片鱗を辿る(まだ見つけていませんが)という文脈。

 

第二は、民俗学の考察の中で、

子どものあそびとして手遊び・手芸が研究された文脈。

柳田國男「こども風土記

大田才次郎「日本全国児童遊戯法」など

 

第三は、現代の幼児教育のなかで、

実践書として手遊びが紹介された文脈。

 

今回は、その第三のアプローチからの、

名著です。

有木照久・三宅邦夫著

黎明書房 昭和47年

「楽しい指あそび・手あそび100」

幼児教育の中で指あそび手あそびを紹介した

おそらく初めてか、それに準じたの本ではないかと思います。

 

カエル、蟹、サザエの壺焼き、お風呂、火事など、

伝統的な手芸も紹介しながら、

創作の手芸や遊び方も提言されています。

 

著者の有木照久先生には、

私もお会いしてお話を伺わせて頂きました。

実は、本ブログで紹介している初出などの文献も

有木先生に教えて頂いたものがほとんどです。

 

有木先生が、江戸時代からの手芸の伝統を現代にご紹介されたので、

私は、そのバトンをこれからの子どもたちに渡すことができれば、

と思っています。

 

エビバディテゲイ!!

 

風の谷のナウシカ・王蟲 -モダーン手芸-

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モダーン手芸、

風の谷のナウシカより、王蟲です。

ナウシカの中でもキーとなる虫ですよね。

冒頭の、脱皮した王蟲から窓を切り出して、

腐海の雪を浴びるシーン、

あの静寂は、印象的でした。

 

さて、王蟲

これは形よりも動きが大事です。

わしゃわしゃと蛇腹を動かして進む感じや、

怒って突進してくるバージョン、

優しく寄り添うバージョンなど、

色々と試してみてください。

マニキュアが赤だと怒りに、

青だと冷静に、とマニキュアで表現の幅を広げるのもおススメです。

 

ちなみに、上の写真は、

ナウシカに触手を伸ばしているシーンです笑。

 

正面からはこんな感じ

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ナウシカの音楽を口ずさみながらやると、

一層臨場感が出ると思います。

是非チャレンジを!

 

エビバディテゲイ!

五右衛門風呂 -クラシックスタイル手芸- からのエコキュート風呂

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今回はクラシック手芸の中の代表作、五右衛門風呂をご紹介。

この手芸は段々湯とか、単にお風呂ともいわれ、「日本全国児童遊戯法」明治34年にも載っている割合と有名な手芸です。

小さい頃におばあちゃんやおじいちゃんに教えてもらった、なんて人も多いみたいですね。

 

手芸の中でも、「風呂」という

動物でも人でもないものを象る、変わり種ですね。

 

このお風呂、ギミックが凝っています。

右手の甲が脱衣所、

右手の中指薬指小指と左手の中指薬指小指を組み合わせたところが洗い場、

左手の親指人差し指、右手の人差し指の三本で風呂釜、

右手の親指でふいごor火吹き竹を、表しています。

複雑ですね。

 

子どもには、人差し指と中指で人間をやってもらい、

トコトコと脱衣所で服脱いでカゴに入れて、

洗い場でかけ湯してお風呂に入るのです。

そこで大人が少しいじわるして、親指をパタパタと動かすと、

焚き口に風が吹き込まれてお湯の温度があがります。

 

それと同時に、風呂釜の左手の親指人差し指と右手人差し指を

ギューっとしぼめて

子どもの「人間」を挟みます。

このギューっと締まる痛さが熱さを表現していまして、

「ちょっとあついよー」というと、

右手親指が左手下からぐっと上にきて、

風呂釜に水を入れるしぐさをする。

 

そうすると同時に風呂釜の三本指をゆるめて

「あー、いい湯だな。極楽極楽」と言ってもらう。

 

そうすると今度はぬるくなりすぎて、

「ちょっとぬるいな、釜焚いて」という、

するとまた扇いで熱くなり、エンドレスになる笑。

 

という。手順も芸も細かい手芸です。

 

この手芸は遊びながらも、

服はちゃんと裏返しをもどしてカゴに入れようね、

とか、

パンツとズボンは分けようね、

とか、

かけ湯しようね、

とか、

肩まで浸かって十数えようね、

など、お風呂にまつわる色々を学べる、という効用もありますね。

 

この手芸、見てもお分かりのとおり、

今ではなかなかお目にかかれない、釜焚きのお風呂なのです。

昔はこうやって火を焚いて、お湯が冷めたら誰かが火を吹いていたんだよ、

だから「追い焚き」っていうんだよ、

と話すと興味をもってくれるかもしれません。

となりのトトロ」は釜焚きのお風呂ですね。

 

ちなみに、

この手芸はリメイクすると現代風になります。

右手の親指を、ふいごの役から変更して、

自動湯沸かしの操作パネルを押す仕草にします笑。

そして、「オフロガ、ワキマシタ」とアナウンスしたり、

お湯がはれたときに流れる音楽を口ずさんだりとアレンジします。

追い焚きしすぎて熱くなり、

「タシ水ヲ、シマス」といってぬるくする

というギミックは五右衛門風呂と同じく使えますね。

五右衛門風呂だと、子どもが戸惑ってしまいそうなときは、

現代風呂で試してみましょう!

 

釜焚きの五右衛門風呂と、

リメイクした現代のデジタルエコキュート風呂、

 

是非ともダブルで楽しんでみてください!

 

エビバディテゲイ!

 

 

手芸の歴史その2

初出からのアプローチはその1で書きましたが、

現代の文脈からの手芸の歴史。

 

手芸を現代の文献で紹介したのは、

こちらです。

 

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大田才次郎 著

日本全国児童遊戯法 -東京・京都・大阪 三都遊戯-

博文館発行  明治34年

 

こちらは原書は読んだことがないのですが、

復刻版が出てまして、

「日本児童遊戯集 (東洋文庫)」

大田才次郎 編, 瀬田貞二 解説

平凡社, 1968(昭和43年)

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おそらく、子どものあそび、

特に言葉を介さない、動作のあそびを網羅的に記した、

はじめての本だと思います。

 

その中で、手芸を紹介する段があり(60頁)

「手芸とは指もて種々の形を模する戯にて、その種類尠少ならざれど、その三、四種を左に略記せん。」

と紹介されています。

手芸の定義が記載されてますね。

わかりやすく言い直すとしたら、

手芸とは、指を使って様々な形を模するあそびである、

というところでしょうか。

 

この本は、絵や図がなく、文章の説明だけなのですが、

眼鏡、段々湯、離れ蟹など、

代表的な手芸が十個ほど紹介されていて、

明治期の手芸の多様さを物語る貴重な資料です。

 

惜しむらくは、最後に、

....

「三番の舌出し」「口鉄砲」「口花火」「栄螺の壷焼き」「鼻毛抜き」「獅子」と枚挙に暇あらざれば略す。

....

と記載されて、手の組み方の紹介なく省略されたものがあること。

 

栄螺の壷焼きと獅子(カエル)は他の文献でわかるのですが、

「鼻毛抜き」や「三番の舌出し」が謎のままで、

略さないでー、と言いたくなりますが笑。

そこは仕方ないですね。

 

この復刻版の瀬田貞二さんの解説を読むと、

「遊戯法を記述した本というものは、実は以外に数が少ない。遊戯の類縁である、あるいはその一部である童歌については、曲節は別として、その歌詞をあげつらねたものが、古くからかなり多くみられるのにくらべて、それに伴って動作する方の遊びの遊び方を書き留めた本は、古来きわめて稀である。思うに、詞章は文字に移しやすく、動作はその煩にたえないことが主な原因であろうが、それ以上にむかしの人々は、日常触目する子どもたちの遊びを文字どおり児戯として、とりあえげる意義を見出さなかったためであろう。」

 

とあります。

この「動作を伴うあそび」がなかなか文献に残らなかった理由の考察として、

とても興味深いですね。

 

児戯に等しい」とは、

漫画だとラオウ海原雄山がよくいってますが、

児戯も立派なものだ!と反論してやりたいです笑。

 

 

という児戯に等しい(というかまさに児戯の)手芸ですが、

本ブログでは真面目に考えていきたいと思います。

 

エビバディテゲイ!!

 

指顔さん(ラージ) - モダーンスタイル手芸-

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前の記事で、モダーンスタイルの指顔さんレギュラーを紹介しましたが、

https://tegei.hatenablog.com/entry/2019/06/20/115633

そのラージ版です。

 

こちらも私が子どもの頃に開発したものです。

もっとも、世界のどこかで同じことをしている人がおそらくいるんだと思いますけど^_^

 

この両手版の指顔は、

手芸の中でも一番「ウケる」手芸ですね。

 

左手の親指と人差し指で、「口」を作るのですが、

そこ口の形で様々な表情を作れるのです、

驚いたり笑ったり怒ったりあっかんべーをしたりと、

ここまで多彩な表情を出せるのは、

指顔さんラージならではですね。

 

指獅子・カエルも、表情は作れるのですが、

基本的なは口の開け閉めが限度なので、

ここまで操作性がないのです。

 

指顔さんラージですと、

会話をしたり、

食べ物を口に入れてもらって「美味しーい」と舌を舐めたり、

毒リンゴを吐き出したり、

嘘をいって鼻がのびたり、

驚いて目が飛び出たり、

 

とギミックが多彩です。

 

さて、この指顔さんラージは、

複雑そうにみえますが、

レギュラーサイズより難易度は低めです。

 

まず、口を構成する方の手(写真だと左手)を

人差し指と親指で輪を作り口を作ります。

中指と人差し指の間に、右手の中指を差し込みます。

この中指が鼻になります。

 

その中指に左手の中指が乗り、

そこに右手の人差し指と薬指を乗せれば、

完成です。

 

右手の親指は普段は耳ですが、

口から出してベロにもなります。

 

遊び方

声色を変えて

「〇〇ちゃん、お腹空いたリンゴください。」

「どーぞ(指をリンゴに見立てて入れてもらう)」

「美味しかったありがとう」

 

変化形

「バクッ」と子どもの指を食べて離さない。

 

変化形

「はい毒リンゴ」

「ん、ん、お腹がいたいお腹がいたい」吐き出す、

「目が飛び出ちゃった」目を上に立てて。

 

などなど。

口が動くので、腹話術をしたり、

腹話術でなくとも声色を変えて話してみると、

大喜び間違いなし!です

 

是非チャレンジを!

 

エビバディテゲイ!

 

 

狐の窓 -クラシックスタイル手芸-

この手芸は、少し変わった手芸で
云われ、があります。

晴れた日なのに雨が降る、なんて日がありますよね。
そんな天候のことを「天気雨」といいます。
そして、この天気雨のことを地方によっては「狐の嫁入り」というのです。

晴れているのに雨が降っているという不思議な現象を
狐の妖力によるもの、と考えたのかもしれません。

そんな狐の嫁入りの日には、
狐の手を両手に組み合わせてできる「狐の窓」から覗くと、
狐の嫁入り行列が見える、とされてきました。

 

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※化物念代記

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※ 「狐の嫁入り

 

この「狐の窓」は
天気雨に限らず、
何かフッと気配を感じたり、
妖しい視線を感じたりしたときに
窓から覗くと、妖が、見えるそうです。

妖しくて面白いですね。

とはいっても、
そんな「狐の窓」も、手芸の中の一つとして紹介されていますので、
(呪術的な意味ももちろんあったのでしょうけど)
カエル・指獅子と同じく、子どもの手遊びとして親しまれてきたといえます。

さて、この「狐の窓」は
テゲイの中でもなかなか難しい部類です。

 

まずは、片手でキツネを作ります。
あの人差し指と小指を立てる、あのキツネです。

それを逆手にしたキツネ同士を組み合わせる、のですが、

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国立歴史民俗博物館著「異界万華鏡」2001.7

 

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手が固い人にはなかなかハードですね。

この簡略バージョンもいくつかありまして、
子どもにはそちらを紹介するのもよいでしょう。

「狐の窓」から、
「あ、妖怪みえた!」とか
狐の嫁入り行列みえた!」というと、
興味津々になること間違いなしです!

 

この妖しい手芸、
是非ともチャレンジしてみてください。

エビバディテゲイ!

 

※大当桂月弓 2巻 『化物念代記』 文政2〔1805〕
古今亭三鳥 作、歌川国丸 画
出版 春松軒西宮新六

http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/9892368

 

※歌虎 「狐の嫁入り文久3年(1863)

 

手芸の歴史 その1

皆さんが子どもの頃に遊んだ

カエルやワニ、お風呂などの手遊び、手芸、

その歴史は遡ると江戸時代になります。

 

初出(私が調べた限りの)は山東京伝小紋雅話」
寛政2年(1790年)
浮世絵師である京伝がその時代の手ぬぐいのデザインを紹介したなかに、
「ゆびじし(指獅子)」として載っているものです。

※ 山東京伝小紋雅話」

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今ではカエルとして親しまれているテゲイですが、

江戸時代後期にはライオンだったのですね。

手ぬぐいのデザインになるぐらいですから、
その当時の人々の間にはポピュラーなものとして
親しまれていたことがわかります。

 

そして、

手ぬぐいのデザインになるぐらいですから、

もっともっと昔から手芸は子ども達の間で親しまれてきて、

言わば当たり前の存在だったはずです。

 

しかし、何とか、もっと古い資料を、

と思って探しているのですが、

なかなか見つからない。

 

というのも、

こういった「子どものあそび」を記録する、

という試み自体が近代以降のものだからだと思われます。

小紋雅話」にしても、手ぬぐいのデザインとして

偶然にも手芸が載っただけで、

手遊び自体に着目して記録されたものではありません。

このような民間伝承が着目されるようになるには、

柳田國男らが確立した民俗学を待たねばならなかったのでしょう。

 

つまりは、

手芸は、子どものあそびの中で、

文字にならない文化として、

時代を越えて受け継がれてきた、といえます。

 

さてさて、

そうはいっても引き続き初出を遡りたいと考えています。

そこで、本ブログをご覧になっている方の中で、

手芸に関わる文献、特に江戸時代以前のものをご存知の方がいましたら、

是非ともコメントDM頂けましたら。

 

全くの想像ですけど、

平安貴族も、源平合戦でも、戦国武将も、大奥でも、

手芸をしていたんじゃないかと

思うんですけどね笑。

 

エビバディテゲイ!

 

小紋雅話 / 山東京伝 [作・画]

出版情報:通油町(江戸) : 蔦屋重三郎, 寛政2[1790]序

早稲田大学図書館蔵

http://www.wul.waseda.ac.jp/kotenseki/html/he13/he13_01956/index.html